キックオフ号

キャンプブレッド2019 in 上高地

今年で10回目を迎えたキャンプブレッドが上高地→松本において9月17、18、19日の3日間行われました。

アメリカでも同様のイベントがあるようで、パンの仕事に携わる素晴らしさを再発掘、同じフィールドの仲間との交流などコンセプトが盛り込まれています。

詳しくはhttp://campbread.net/をご覧ください。

https://lodge.gosenjaku.co.jp/の模様をレポートします。今回は9月17日の「The parklodge 上高地」

河童橋横に位置していて、六百山から汲み上げた水が気持ち良かったです。勿論館内、サービスも抜群でした。

10回目のキャンプブレッドは9月17日の16時から「The parklodge 上高地」にて始まりました。

はじめに実行委員の渡辺匡太氏(Sweet)から開催の挨拶があり、アドバイザーを務める明石克彦氏(ベッカライブロードハイム)からキャンプブレッドの意義に関する話がありました。

続いて明石氏から、この日の講師である竹谷光司氏(美味しいパンの研究工房 つむぎ)が紹介され講演はスタート。

講演は「リテイルベーカリーのこれからを考える」と題して、いくつかのキーワードから構成されました。

発酵種

焼き菓子

国内産小麦

女性パン職人

多加水製法

SNSの利用

石窯

人材育成

冷蔵法・冷凍法

サンドイッチとカフェ

全粒粉

印象的な話ばかりでしたが、今回は“国内産小麦”の話を中心にお伝えします。
冒頭、竹谷氏より以下の話がありました。

パンの作り方に正しい、間違っているはありません。皆さんには美味しいパンを見極める判断力を身に付けて欲しいと思っています。今日お話するキーワードは私が選んだ内容ですが、皆さんは自分たちでキーワードをみつけて、自店に戻って話し合ってみてください。国産小麦は日本人の食味・食感に合っている

昨今の国産小麦は優秀です。1CWと遜色のないスペックの小麦粉が国産でも存在します。1CWとは20種類以上の品種をブレンドしてスペックを維持している優秀なパン用小麦です。
次に国産小麦に関し話していきます。
国産小麦は農水省から一品種1銘柄の規定があり、ブレンドが許可されていません。国内の育種家の方も、時代の流れもあるので一銘柄多品種でブレンドしていかないと安定したものは作れないという見解になってきています。一品種1銘柄で製粉され、これだけのスペックを誇る国産小麦は世界レベルと言って良いでしょう。

私の経験から言わせて頂くとパンの美味しさのひとつは加える水の量です。同じ品質、形状のパンなら水を多く入れた方が美味しくなります。

北海道に「きたほなみ」と言う麺用粉がありますが、この粉は製パン適正にも富んだ優れた粉です。湯種製法に適しており、吸水も入ります。優れたデンプン質を持った小麦なのです。

国産小麦

95%

吸水

1CW

85%

吸水

これは「きたほなみ」を使用した湯種製法で食パンを作った際の吸水と1CW の吸水の差です。10%の差はデンプンの質と思われます。湯種製法はデンプンに水が入るので吸水率が高くなります。麺用粉ですが「きたほなみ」は湯種製法に適している粉と言って良いでしょう。これはデータとしても実証されています。

世界で獲れている小麦は通常アミロース(28~29%)のものが主ですが、我々が毎日食べているお米のジャポニカ米(短粒米)はアミロース含量が少ない(18~20%)お米です。

アミロース含量が低いお米を好む日本人には低アミロース系小麦で作るパンが味覚に合っていると考えられます。国内でも低アミロース系の小麦「ゆめちから、春よ恋」が収穫されています。

湯種製法でモチモチ感を出したパンが好まれると話しましたが、小麦そのもののモチモチ感で日本人の味覚に合ったパンを焼くことが出来ると言って良いでしょう。

食料自給率の向上

国内の麺用粉は国産小麦が6割近くを占めています。一方でパン用粉小麦120万トンのうち国産小麦は2パーセント弱に過ぎません。このことから分かるように、食料自給率を上げるには、パンに国産小麦を使うことが近道と考えても良いのではないでしょうか。

国産小麦を使用する理由は、安心安全ではありません。国産小麦も海外から入ってくる小麦に負けない安全性を維持していますが、海外から入って来る小麦の多くはHACCPの規格を取得した農場で収穫されています。農薬は国内より多く使われていることはありません。ポストハーベスト農薬の指摘が言われていた時期がありますが、ポストハーベストは今では死語と言っても過言ではありません。日本が小麦を輸入している国では何十年も前から使われていません。

大事なことはパン屋さんが国産小麦を使って美味しいパンを作ることです。

2時間強の講演はキーワード別に様々な話が投げ掛けられましたが、参加者はどのように感じたのでしょうか。明日からのパン作りに活かしてもらいたいものです。

講演の後は夕食を兼ね、参加者が交流を深める場になりました。



他にライブ演奏もあり、盛り上がったまま夜が更けていきました。


この日、誕生日を迎えたデイジイ倉田博和社長

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