日仏商事株式会社 技術講習会 “Tradition トラディション”

日仏商事株式会社 技術講習会 “Tradition トラディション”

日仏商事株式会社 2019年7月9日
技術講習会 東京事業所
https://www.nichifutsu.co.jp
テーマ:“Tradition トラディション”
講師:和田佳丈氏

●フランスパン ディレクト法

●パン・オ・ルヴァン

●バゲット 生地冷蔵

同社では「Tradition “トラディション”」とテーマを掲げ、年4回技術講習会を開催している。
この日のアイテムは「フランスパン ディレクト法」とこの春、同社から発売されたリロンデル1895が配合された「パン・オ・ルヴァン」「バゲット生地冷蔵法」が実演された。
講師を務めた和田氏より製パン理論を交えながらの実技講習会となった。

フランスパン ディレクト法

配合 %

フランスパン専用粉:100

インスタントイースト赤:0、4

塩:2

ユーロモルト:0、2

水:70

工程

ミキシング:L2分オートリーズ15分 L6分 H30秒

捏上温度:22°C

発酵時間:90分パンチ90分

分割:350g

ベンチタイム:30分

成形:バゲット/バタール

ホイロ:60分/28°C

焼成:240°C/225°C/30分 スチーム有り

オートリーズ

講習会は「フランスパン ディレクト法」のオートリーズ前の仕込みからスタート。

オートリーズ前のミキシングは短時間で終わらせたいという解説があり、ミキサーボウルのセンターバーの中心に粉を山になるように入れる。次に粉の山の中心部分に水を注ぐ。このような作業を毎回ルーティーンのように行うことでミキシング作業全般が安定し作業効率が上がる。

吸水は全量入れずに若干量残しておく。スパイラルミキサーは、フックの角のコの字の部分に粉が残る為、残しておいた水で粉を洗い流す。


オートリーズに入る前の生地


捏ね上げ後の生地

 

ミキシング終了間際にイーストを振り入れておく。オートリーズ中、イーストに生地の水分を吸わせることを目的で行う。

オートリーズを行うことで生地に粘りが出てくる、それによってこの後のミキシング効率も上がり、生地に伸びの効果をもたらす。フランスパンはリーンな生地なので伸びを出すのが難しく、オートリーズなどの作業で伸びを出すようにする。

ここでこの日使用されたミキサーに関する話があった。
今回使用ボンガード社の
スパイラルミキサーEVO は、以前のミキサーボウルと容量は同様だが直径が広がり、深さが浅くなった。よって生地はボウル内でより広がり休む時間が増えた。フックとボウルの回転数も上がったのでミキシング時間を短く終わらされることが可能となった。ボウル自体も浅くなったので生地が取り出し易くなり作業性も向上した。

スパイラルミキサーの1速は生地に力を付ける効果をもたらす。2速は生地に力とともに伸びをもたらす。以上のような考え方でミキシング時間を組み立てる。
ミキシングの見極めは表面が滑らかにまとまり、光沢が出たら終了とする。

一次発酵で十分な発酵を取り小麦粉に付着している酵素を働かせてデンプン、グルテンを糖分に分解し緩む状態を作ることで伸びのある生地となる。

発酵過程で生地の物性は強くなっていく、その為伸びに影響が出てくる。
生地の力を確保しつつ、オーブンで伸びるパン生地がフランスパンには求められてくる。


パンチ作業


分割前の生地

リロンデル 1895

この日「パン・オ・ルヴァン」「バゲット 生地冷蔵」の2アイテムに配合されたリロンデル 1895だが、初期のガス発生量が低いのが特長のイースト。
この特長を活かし様々な製法に活用が可能という話があった。

まず、考えられるのが発酵オーバー制御。
発酵オーバーの原因は様々だが、「捏上温度が高い」「一次発酵の環境温度管理」などの要因から起こる。こういった事項にも初期ガス発生量が抑えられたリロンデル 1895は効果を表す。

次に近年よく用いられる冷蔵製法だが、生地の膨張状態がわかり辛く対応が難しく見極めが難易と言われている。以上の様な事例には初期ガス発生量が抑えられたリロンデル 1895が効果的と考えられる。

以上の事例を踏まえて、ここからはパン生地のガス発生量と酵素、水分量の関係に関する解説があった。

例としてフランスの生イーストとインスタントイースト赤とリロンデル1895のガス発生量を比較しながら3つの発酵、熟成の検証が成された。
リロンデル1895の形状はセミドライイーストと同等とされた。
生イーストとインスタントイースト赤、リロンデル1895のガス発生量の違いは水分量によって異なってくる。
インスタントイースト赤は水分量5%、リロンデル1895は水分量が25%と低い為、生地内の水分を含んだ後に細胞の活性が始まり、その後ガス発生が起こる。
生イーストは水分の保有量が多い為、生地になるとすぐにガス発生が始まる。

インスタントイースト赤とリロンデル1895だと菌株の違いの為、ガス発生の働きも変わってくる。
菌株の話として、インスタントイースト赤、セミドライイーストレッド、フランスの生イーストはラピドタイプとして、糖配合が少なくても初期のガス発生量が早く、インスタントイースト金、セミドライイーストゴールドは、ラントタイプとして、ラピドタイプと比較すると初期のガス発生の仕方が遅いが、その為、糖配合に多い生地に適している。

パンは発酵食品の中では発酵と熟成が同時に進行し、それぞれ異なる作用ということを理解しパン生地作りを進めていく必要がある。

「発酵」は主に温度によって作用する
発酵不足 生地伸びる 発酵不足で糖分が残る焼き色が強い
発酵オーバー 生地が強く、伸びない 焼き色は薄くなる

「熟成」は温度にも関係するが、主に時間によって作用する
熟成過多 でんぷん、グルテンが分解されている為、生地が伸びる 焼き色が強い
熟成不足 生地がでんぷん、グルテンが分解されていない為、伸びない

パン・オ・ルヴァン

ラフレイシ (かえり種)

ルヴァン・トウ・ポワン(仕上種)

パート・フィナル(本捏)

石臼挽き粉(配合%)

5

18

77

水(配合%)

2、5

9

塩 1、8

リロンデル1895 0、06

ユーロモルト 0、3

水 63、5

仕上種 35、7

ルヴァン(配合%)

1、2

かえり種 8、7

ミキシング(工程)

L5分

L5分

L2分オートリーズ15分 L6分

捏上温度(工程)

26°C

26°C

22°C

発酵時間(工程)

3時間

3時間

60分パンチ60分

分割 400g

ベンチタイム 30分

成形 ブロー

ホイロ 180分/28°C

焼成 240°C/225°C/40分スチーム有り


分割前のパン・オ・ルヴァン生地


分割丸め


ブロー形に成形


焼成前の生地状態

ルヴァン

この日使用されたルヴァンに関する話も以下のような解説が行われた。

ルヴァン・デュールは粉と水を6回ほど足して種として仕上げる。

その後5日間を目安に種として使用が可能となる。

ルヴァン・リキッドは粉と水を 4 回ほど足して、種として仕上げる。

デュールと比べ水分が多い為、酵母、乳酸菌の活性が早い為、種としての使用期間は2日間を目安とする。

以上のことを踏まえてルヴァンの効果を理解し使用していく。

フランスでは差別化するという意味で使用されていることが多い。

ルヴァンは乳酸菌を多く含んでいる為、粉の酵素が活性され、酸味があり、野趣的な香りや内相の荒々しさが特長のパンに仕上がる。

ルヴァンの栄養面

ルヴァンは遊離アミノ酸と呼ばれている有機成分を発酵の過程で生み出す。

この有機酸が老化防止、カビを抑える作用となってくる。

乳酸菌のある種の菌株は水分を吸収してグルテンとの総合作用でデキストリンなど細かい糖分に分解することで生地を柔らかくして、デンプンの老化を抑える。

フランスパン 生地冷蔵

配合 %

フランスパン専用粉:100

リロンデル1895:0、4

塩:2、3

ユーロモルト:0、3

水:67

パート・フェルメンテ:20

ルヴァン・リキッド:15

工程

ミキシング:L2分オートリーズ15分 L6分 H30秒

捏上温度:24°C

発酵時間:60分

冷蔵:1°C/オーバーナイト

分割:350g

復温:60分/28°C/16~18°C

成形:バゲット/バタール

ホイロ:60分/28°C

焼成:245°C/225°C/30分 スチーム有り

フランスパン 生地冷蔵 分割前

フランスパン 生地冷蔵

捏ね上って24°C位の生地を冷蔵庫に入れると中心温度は60分で17~19°C、120分で12~14°C。この温度帯は他のパンを冷蔵する場合にも適した温度帯とされた。

リロンデル1895で仕込んだ場合、初期のガス発生が少ないので、生地も冷えやすい。温度変化が起きるのは、空気の層がある為で層を作らないように冷やす前に平たく薄く伸ばし管理することがポイント。

以上のような考え方をすると冷蔵庫のスペックが弱くても問題なく対応が可能となる。

分割時の生地温は一晩冷蔵していたので2~3°C。この冷蔵法は生地の外、内側の冷え方のバランスを取って冷やしている為、冷たいまま、分割に入ることができる。

その後、復温し成形に入る。

成形時の生地温は15°Cあたりを目安とする。生地温は一つの目安になるが生地を触り中心に芯が抜けている状態を確認し成形を行っていく。

今回の冷蔵法の場合は発酵と熟成が抑制される為、風味を加える意味で、今回はルヴァン・ リキッド、パート・フェルメンテを配合した。

冷たい温度帯では酵素の動きが緩やかになる為、モルトは0、3%配合。

イーストは実温2°Cでガス発生を止めることが出来るので冷蔵庫は-1~0℃に設定。

一方で酵素はマイナス19°Cの温度帯でなければ止まらない。

以上のことから、この製法は緩やかであるが熟成は進んでいる。

発酵を止めて、熟成は長く取り、伸びと味を作っているとされた。

モルトは酵素分解を進め、時間あたりのガス発生を増やす為に配合している。

酵素分解が進むと生地が緩み、伸びも良くなり機械耐性にも適した生地となる役割を持つ。

酵素の動きを促し生地中の糖分が増える為、クラストの焼き色も付きやすくなる。

オーブンで焼く時間が長ければ長いほどクラストは厚くなる。適切な時間で焼成を行う為にも配合や製法は適切に行う必要がある。

成形の見極めを生地に芯がないか確認してから成形に入る

成形

クープを入れて焼いていく

焼成中

⚫︎今回使用の原材料ほか 問い合わせ先

■ボンガード社のスパイラルミキサーEVO

https://www.nichifutsu.co.jp/products/machine/spiral-mixer-evo/

→使用材料

■インスタントイースト赤(ルサッフル社)

https://www.nichifutsu.co.jp/products/foods/saf_iyr/

■リロンデル1895(ルサッフル社)

https://www.nichifutsu.co.jp/products/foods/13761/

■ユーロモルト(ディアマルテリア・イタリアーナ社)

https://www.nichifutsu.co.jp/products/foods/diamalteria_molt/

→問い合わせ先

■研究開発課 03-5778-2486


丸め解説