サンドイッチ日和 8
パン・ペルデュ
ナガタユイ
「パン・ペルデュ」はフランス語です、英語では「フレンチトースト」と呼ばれたりしています。
「パン・ペルデュ」を直訳すると「失われたパン」。時間が経って固くなったパンを再生させ、美味しく食べてもらう一皿です。
今回、ナガタさんと次回の打ち合わせをしていると「どうも、この前テレビで紹介したパン・ペルデュが、バズっているみたいなのですよ」
「???」バズるとはネット上で話題になっていると言う意味で、世間を巻き込んで話題になっていたそうです。
以下は、ナガタさんがTV番組内でフレンチトーストを紹介し、それを見た視聴者のバズった!ツイートです。
『フレンチトーストを作る際、牛乳と卵を混ぜた液にパンを浸しがちです。でも卵が混ざると染み込みにくくなる上に、卵に火が通らないと生臭く(これは正確には、生卵臭く)なります。牛乳と砂糖を混ぜた液にパンを浸し、卵液はフライパンでパンを焼く際に上からかけましょう』私は…こういう知識を…!家庭科で学びたかった!」
投稿翌日の昼には、8万以上リツイートされ、36万のいいねが付いたようです。
番組関係者はこの件をこのように分析
『フレンチトースト自体が持つ力』
『驚き、そして知らせたい』
『共感性』
ナガタさんのコメントです。
「番組が放送された時間は学校や仕事で忙しい時間なのに、これだけツイッターで拡散されていることにびっくりしています。今は新型コロナの影響で外で食事をする機会が減っている中、スーパーマーケットで簡単にそろう食材でおいしい料理が出来ることで、食の楽しみも実感してもらえたのではないでしょうか。また、かつて家庭科の授業では、与えられた食材でみんな同じものを作る事を教わりました。でもパンと卵と牛乳は、フレンチトーストにもなるし単純にバタートースト、目玉焼きにもなる。オムレツを挟んでサンドイッチとして食べることも出来る。食材と食材をつなぐフードコーディネーターとして本当のおいしさを追求していきたいです」。
それでは、ナガタさんにお話を伺いながら「パン・ペルデュ」を辿りましょう。
はじめは認知度も高い卵と牛乳を合わせアパレイユにつける方法から紹介します。
日本のホテルや専門店では卵と牛乳を合わせて、長時間アパレイユにつけ込ませます。この製法ですと、食べたい時にさっと食べられると言うわけでは無かったり、長い間冷蔵庫のスペースを占拠するなど合理的とは言えないかもしれません。ほかに卵がしみ込んだパンは加熱が難しく、フライパンで焼くと生焼けになる等、デメリットとも捉えがちな事項が考えられます。
そこでナガタさんからの提案です。
はじめに卵は濾してなめらかにし牛乳と合わせるアパレイユを作る。アパレイユは温かいうちにパンと合わせ、最後に真空に近い状態で袋に入れて保管します。以上のような点を押さえておくと、短時間でしっかりしみ込み、生焼けなど防ぐことが出来ます。
次に卵液と牛乳液を分けて作るレシピを紹介します。この作り方は「新ラルース料理大辞典」にも掲載されている正統のレシピです。そこには、パン・ブリオッシュ(ブリオッシュ風食パン)で作ることが多いとも書かれています。
ブリオッシュは、パンに卵が多く配合されているので、牛乳をしみ込ませるだけでもリッチな味わいで、卵にくぐらせて焼くことで、表面を焼き固めることができる、という、理にかなったレシピです。
映画「クレーマー・クレーマー」のフレンチトーストを作るシーンでフレンチとはつくものの、アメリカ解釈のフランス風トーストなので、それがフランスのクラシックなレシピというわけではない、、、というのが勘違いされています。
しっかり浸したタイプも、焼き加減にこだわり、フライパンなら途中、蓋をして中心部までしっかり火を入れたり、フライパンで焼き色をつけてからオーブンに入れて、丁寧に焼けば美味しく作ることはできます。
この作り方なら、アルバイトさんでもささっと失敗なく作れるのも魅力です。
でも、そもそも、古くて固くなったパンを無駄なく美味しくいただく、ためのレシピなので、思いついた時にささっと気軽に作れるのが一番ではないかと私は思っています。
材料(2枚分)
ブリオッシュ・ナンテール
(30㎜スライス) 2枚
無塩バター 12g
メープルシロップ 適量
【たまごのアパレイユ】
たまご 1個
塩 ひとつまみ
グラニュー糖 10g
【牛乳のアパレイユ】
牛乳 200ml
グラニュー糖 20g
バニラビーンズ 1/4本
作り方
卵のアパレイユ〜A
たまごをボウルに割り入れてカラザを取る。塩ひとつまみを加えてよく溶きほぐし、グラニュー糖も加えてよく混ぜる。
牛乳のアパレイユ〜B
牛乳、グラニュー糖20g、バニラビーンズ(縦半分に切り、ペティナイフで種をこそげ取る)をさやごと鍋に加える。
沸騰直前まで温めてグラニュー糖を溶かす。
Bを目の細かいザルかシノワで漉してバットに入れ、ブリオッシュ・ド・ナンテールをひたして、耳までしっかりとアパレイユをしみ込ませる。〜C
CをAのアパレイユにくぐらせ、全体にたまごをからめるようにする。
フライパンに無塩バターの半量を溶かし、Cを中火で焼く。焼き色が付いたら裏返し、残りの無塩バターも加えてバターが焦げないように香りよく焼き上げる。両面に焼き色が付いたら側面を立てるようにして、耳も焼き色を付ける。
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