ベーカリーワークショップ 10月
シュトレン
今回は「シュトレン」を紹介しますが、その年を締め括る大仕事が「シュトレン」作りと言えるでしょう。クリーミング油脂、1ヶ月以上漬けたフルーツなど多くの原材料を配合し、中種、オートリーズなどの製法を用いて捏上げていきます。様々な要素から成る「シュトレン」作りを学びます。製作は山﨑隆二さんにお願いしました。
ご存知の方も多いかと思いますが、山﨑さんは2002年にフランスで開催されたパンの世界大会「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」において日本人初の世界チャンピオンとなった際のチームリーダーを務めていらっしゃいました。その後も日本のパン業界を支える存在として活躍され、現在は株式会社カネカにてテクニカル・アドバイザーとして、全国各地でパン作りのイロハを伝えています。
今回お願いしたシュトレンしかり他のパンしかりです、山﨑さんはパンを作る際に「普通のパンを普通に作る」と仰います。パンの技術も進化し食パンひとつ取ってもいろいろな考え方がある昨今ですが山﨑さんが作る「普通のパン」「普通に作る」とはも同時にテーマとさせて頂いております。
最初に、ドブ漬けするバターを弱火で溶かしていきます。
沸騰したバターは徐々に落ちていきます。
最後に火を止め、後の作業に備えます。
本捏準備
ドライフルーツ
ドライフルーツはレーズンをベースに他は好みのフルーツを用いるのが好ましく、1ヶ月以上漬け、アルコールを飛ばしておきます。食べた時もアルコールは感じないようにしたいですが風味は残したい。
油脂類クリーミング(塩、砂糖入り)
バターは風味付け。型で焼くのでふわっとした食感になります。
今回の配合を油脂が多いので天板で直焼きするとクタっとなってしまうようです。ショートニングは食感をサックリともろくしたい為にベーカリーでは配合されることがあります。
以上のような下準備は、本捏へのアプローチです。
上記で準備した副材料は分量も多く混ざるまでに時間が掛かる為、
本捏の際の下準備とします。(他に本捏用の粉は冷やしておく)
中種
(配合)強力粉50% 生イーストDR7% 牛乳30%
(工程)ミキシングL5分 捏上温度25分 発酵時間30分
25℃~26℃で捏上げていきます。よって仕込む際の牛乳は温めて使用
捏ね上げ後はホイロでしっかりと発酵とります。
この発酵は発酵菓子なのでこの後の工程を踏まえた発酵となります。
発酵によるイースト臭が残りやすい為、マスキング効果の意味で中種には牛乳を配合します。
油脂の量が多い為、ある程度の発酵力が必要なのでイーストの量が多い。
イーストが多いということは発酵が短く、グルテンの繋がりもなく、サックリしてくる。ショートニングの効果同様にサックリします。
本捏
ヨーロッパの食べ物ということもあるのでフランスパン専用粉を選んだ。
バターの融点は28℃なので生地温を上げないように26℃あたりに抑える。
捏上温度が高い場合、表面に油が出てきてしまいテカリ、腰もちも悪くなる。
以上のように本捏終了時の生地温には気を配る。そういった意味での上記の下準備ということ。フルーツを混ぜる際も混ざりやすくする為、オートリーズを取る。
(配合)フランスパン専用粉 50%
洋酒漬けフルーツ 120%
砂糖 15%
塩 1、5%
カネカ発酵バター食塩不使用 30%
ショートニング 15%
マジパン 10%
クルミ 20%
アーモンド 10%
フィグ 10%
シナモン 3g
ナツメグ 1、5g
製法
(工程)
ミキシング L5分MH10分オートリーズ10分↓フルーツM2分
捏上温度26℃
発酵時間 10分
分割 650g 300g
ベンチタイム 10分
成形 シュトレ型 マジパン 100g
ホイロ 30℃ 45〜50分
焼成 上火190℃ 下火180℃ 小30分 大50分
この日仕込み量は2kg。事前にマジパンを分割し棒状にしておきます。分割の際に生地とマジパンの数が合わない場合、どこか計量ミスなどがあったと考えられます。こういった目安も作業のひとつ。
澄ましバターに水分、脂肪分が残っていると酸化の原因となります。油分のみの状態のものを作っておきます。澄ましバターは80℃の温度帯のものを掛けることで浅く塗ることができさっぱりとした風味を付与します。
仕上げに粉糖をふりますが、この日はなく粉糖が選ばれました。
なかない粉糖は舌にのせた時にひやっとした食感を感じるそうです。
粉糖選びは好みではないかという話もありました。
「シュトレン」の価格に関して聞いてみました。
「これだけ手間暇掛けているのだから、通常販売しているパンより高い価格で販売しても構わないと思います」。
トラデイショナルなものがあり、美味しければアレンジされたシュトレンもあっても良いと思います。
取材中こんな話も聞かせてくれた。
シュトレンというとひと月くらい掛けて食べるイメージで作られているけど、作りたての温かい状態のシュトレンは実は美味しい。
表面がカリカリ、中がふわっとしているそうです。
作り手の特権として温かいシュトレンも味見する価値があるようです。