2019年9月3日
日清製粉株式会社(東京都中央区)
配合中の※は日清製粉の製品
レ・アンバサドール・デュ・ド・ジャパンが講習会が日清製粉株式会社(東京都中央区)にて行われました。
レ・アンバサドゥール・デュ・パン・ド・ジャポンはフランスで活動する 同会の日本支部です。会長を務めているのは、川良弘氏(株式会社カワ)。
同会は、フランスはもとより世界的なネットワークを誇っており、各国のメンバーと食を通じて文化交流を深めています。その一環として、フランスで2年に一度開催されているパンの国際大会「モンディアル・デュ・パン」に日本人選手を派遣しています。
7回目を迎えた「モンディアル・デュ・パン」は国内でも認知度は高くなってきています。健康面、栄養価などを意識したパンが大会のレギュレーションに組み込まれています。他にも「コミ」と呼ばれる22歳の助手が付くことも大会の特長です。この日会長でもある川氏も述べていましたが、学歴が優先される日本の社会では、コミの年齢の職人さんはヨーロッパと比べると経験値で大きな差があります。しかし前述したように国内での認知度も高くなってきたのと、同会を運営する関係者の様々な試みによってコミの実力も近年伸びてきているようです。
今回コミを務めている久保田遥さんも代表の座を勝ち取った時と比べると現在は力を付けてきていると安倍竜三氏 (同会副会長)からもお墨付きが押されるほどです。
次に今回の日本代表を務める大澤秀一さんは、群馬県出身で現在自店である「コム・ン」を高崎市にて構えています。コミの久保田さんは同店のスタッフでもあります。大澤さんは、西川功晃氏の「サ・マーシュ」にてパンの修業を積みました。西川氏も同大会の日本代表を務めた経験があり、大澤さんは師の背中を追いかけ、今回代表の座を射止めのです。
講習会は本選に向けた意気込みや久保田さんとのチームワークなどが見所となり、師匠の西川さんとの掛け合いもあって緊張感の中にも和やかさも感じる内容となりました。
そして同会が掲げる若手の育成の一環として「ザペニンシュラ 東京」の本多伸也さんが講師デビューしました。他に同会を支える山﨑隆二さん、児玉圭介さんも講師を務めバラエテイに富んだ内容となりました。
川良弘会長(株式会社カワ)
今日は第7回モンデユアル・デユ・パンに向け、日本代表へのエールを込めた講習会です。大会は規定の中にコミ(22歳以下)への指示も採点に盛り込まれています。今日はそのあたりも見所になると思います。日本はまだ優勝がありませんが、大澤さんには是非優勝を遂げてもらいたいという想いの詰まった内容になっています。
大澤秀一氏(コム・ン)
日常パン
配合の半分の小麦粉を合わせ6°Cで一晩置く。
翌日、残りの粉と原材料でオートリーズを用いて仕込んでいく。
ミキシング自体はしっかりと行いスパイラルミキサーでは L4~5分 H1分。
本選用のパンは普段販売している製品と比べるとボリューム、内相のバランスが異なるので難しさを感じている。
コンクール用のパンというイメージを持たれるが、日常使いのパンとして美味しく食べられる。
配合%
リスドオル 50※
テロワールピュール 50※
塩 1、8
ドライイースト 0、3
ユーロモルト 0、3
ルヴァン・リキッド 5
水 70
健康と栄養のパン
大麦と大豆を焙煎した粉を配合。他に炊いたキヌワも配合されたんぱく質が豊富でな日本的な健康を意識した素材で構成されたパン。
最終成形は決まっておらず、考えながら形を生み出しているという話を受け、西川氏から「生地を触っていくと成形方法が見えてきます」とフォローが入り師弟として息のあったところが伺えた。
配合%
カメリア 40※
大麦 5
大豆の粉 5
セミドライイースト 0、05
水 60
カメリア 50※
砂糖 5
塩 1、8
生イースト 2
ルヴァン・リキッド 20
水 12、5
大豆由来油脂 3
キヌア 20
西川功晃氏(サ・マーシュ)
彼の成長が日々感じられる、皆さんも何かを学んで帰って欲しいと述べつつパン・トラディショネルをベースにした3種類のパンを披露された。
パン・トラディショネル
配合%
リスドオル 100※
セミドライイースト 0、2
塩 1、6
発酵生地 10
モルト 0、2
ビタミンC 0、05
水 75
製法
ミキシング L3分オートリーズ30分 L3分↓塩 L6分 H0、5秒
捏上温度 24°C
発酵時間 30分パンチ30分 5°Cで12時間
プテイパン ファイバー
繊維質が配合されたパンだが、決して繊維質をメインには考えないようにしている。考え方としては糖質の吸収を緩やかにするパン。
配合g
パン・トラディショネル生地 1000
ファイバーカンテン 150
ファイバーカンテン配合 g
ファイバーリクサー 200
水 400
ルカンテン 48
製法
復温 30~50分
分割 100g 継ぎ目を上にする
ベンチタイム 20~30分
成形 太白ゴマ油を塗り成形(布取り、継ぎ目は下)
ホイロ 20~30分
焼成 上火250°C下火230°C15分スチームあり
継ぎ目を上にして焼く
ブール ドメール
バターの特長を活かすパン。この日使用したバター以外でも作れるが特長のある魅力的なバターを使い製品にストーリーが欲しかった。
配合g
パン・トラディショネル生地 1000
ブールドメール 200
上記生地 1000
カルダモンのお酢に漬けたりんご 200
製法
復温 90分
分割 200g 継ぎ目を下にする
ベンチタイム なし
ホイロ 20~30分
焼成 上火250℃下火230℃ 15~18分スチームあり
ベーキングシートに引き継ぎ目を上にして焼く
豆乳クリーミーフランス
りんごをカルダモンのお酢でフランベし、混ぜ込んだパン。
カルダモンのお酢を全量火にかけていく。半量くらいになったらりんごを入れ潰れないようにソテーしていく。りんごの酸味をお酢で強調させパンと合わせるとよりりんごを感じてもらえるように仕上がる。
配合g
パン・トラディショネル生地 1000
マメマージュ 300
上記生地 1000
カルダモンのお酢に漬けたりんご 300
製法
復温 30~50分
分割 200g 継ぎ目を上にする
ベンチタイム 20~30分
成形 太白ゴマ油を塗り成形(布取り、継ぎ目は下)
焼成 上火250℃下火230℃ 16分スチームあり
本多伸也氏(ザペニンシュラ 東京)
本多氏が勤務するホテルではマンゴープリンが人気製品で、シュトーレンにもマンゴーを配合した。この日の出来はアルコール臭が少なくいつもお店で出しているものに仕上がった。諸先輩に囲まれ終始緊張した様子の本多氏だったが、製品が無事に仕上がり安心した様子だった。
シュトーレン
配合%
中種
バイオレット 20※
リスドオル 20※
生イースト 3
牛乳 25
製法
ミキシング L5分M1~2分
捏上温度 26°C
発酵時間 60分
本捏
配合%
バイオレット 30※
リスドオル 30※
生イースト 3
マジパンローマッセ 10
卵黄 8
生クリーム 2
牛乳 5
グラニュー糖 10
塩 1
発酵バター 50
バニラシュガー 1
ナツメグ 0、4
カルダモン 0、1
シナモン 0、2
サンメイドレーズン 30
ドライサワーチェリー 10
ドライマンゴー 15
オレンジピール 15
アーモンド 15
マカダミアナッツ 15
ラム酒 30
製法
ミキシング L5分M3分↓L2分
捏上温度 26°C
分割・成形 捏ね上げ後すぐに分割 型詰める
Sサイズ180g、Lサイズ500g
ホイロ 32°C 50分
焼成 L 上火190°C下火180°C(下天板)
30分で切り返し5分、蓋を取って3分
S 上火190°C下火190°C(下天板)
20分で切り返し5分、蓋を取って3分
児玉圭介氏(ボン・ヴィボン)
あんぱんを作れる職人が少なくなってきている昨今だが、このパンは児玉さんの店ではロングセラーなパンとして人気を博している。
分割後のベンチタイムを長めにとることで焼き上がったパンの生地内に空洞が出来る。そこに生クリームを詰めていく。冷蔵庫で販売する為三温糖を配合する。お陰でパンは硬くならない。
生クリームの脂肪球の大きさにより乳味の感じ方が異なる。
口に入れた時にすぐに乳を感じるように脂肪球の大きいものを選んだ。
生クリーム100%に対し10パーセントのグラニュー糖を配合しホイップしていく。
生クリームあんぱん
配合 %
エコード 90※
スーパーバイオレット 10※
三温糖 16
塩 1、8
生クリーム 10
加糖卵黄 10
生イースト 3
水 46
バター 10
製法
捏上温度 27°C
発酵時間 60分
分割 20g
ベンチタイム 30分
成形 あんこを包む
ホイロ 38°C 50分
焼成 220°C7分
山﨑隆二氏(カネカ食品株式会社)
イタリアではパネトーネ種で作られているが、本場の種をリテールベーカリーで取り寄せるのは大変なことなのでルヴァンで製作。 ルヴァンはシェフ、仕上げ種でも問題ない。
1%配合して作るミルク種は捏ね上げてから26°Cで保存し一晩置く。
本捏で種を使用する前には必ず硬さを確認してから使用する。
ミルク種はpHを下げる効果も良いので夏場は防腐剤効果をもたらす。食パンなどに使用すると効果が良い。
粉は強いものを選ぶことで、柔らかな食感とボリュームのある製品に仕上がる。
本捏では、イーストを1.2%配合し時間をひっぱることでパネトーネらしい酸味を出していく。
本捏の際に捏上温度を上げたくないので原材料は仕込む前に冷やしておく。
初期ミキシングの生地は硬いが、硬い方がミキシングはかかかりやすい。パネトーネのようなパンは原材料全量を最初から入れてしまうと柔らか くなりミキシング時間が掛かってしまうので上記のようなミキシングが好ましい。砂糖も2回に分けて混ぜることでグルテンのつながりもよくなる。
オレンジピールは食感を感じやすくする為、大きめなものを使用していく、口に入れた際に香りや食感を感じやすくし、サルタナレーズンは甘みがあ るので味が丸くなる。
ミキシング終了はミキサーの種類にもよるが、生地がボウルから離れるところを目安とする。
分割、成形時はサラダ油をめん台に塗って作業を行っていく。
手粉は生地が切れ易い、オリーブオイルは苦味ある。
丸めの時にガスを抜いていくが、生地中に油は入らないように丸める。
油が中に入ってしまうと焼き上った際に内相に穴が開き易くなる。
この後ドウコンで一晩置くが、すぐに入れずに生地を常温で休ませてからドウコンに入れていくと生地の伸びがよくなる。
イーストの使い方、時間の使い方でパンの味が変わってくる。
種は厄介だと思われがちだが、色々なパンに活用が効くので試していくと面白いパンができる。
食べた時に裂けるチーズのように、縦に裂けるような食感を目指した。
味は今日より明日と日に日に変化のあるものに仕上げる。
パネトーネ
配合 %
リスドオル 30※
牛乳 20
ルヴァン 1
製法
ミキシング L5分
捏上温度 25°C
発酵時間 24時間
配合%
カメリア 50※
スーパーキング 20※
バター 40
全卵 30
卵黄 20
牛乳 15
生イースト 1、2
砂糖 20
塩 1、8
はちみつ 10
バニラオイル 0、3
サルタナレーズン 40
オレンジピール 20
製法
ミキシング L3分 M3分 MH8分
↓砂糖 MH3分↓卵黄 MH2分
MH2分↓バターMH2分 MH5分
↓フルーツ類 M3分
捏上温度 26°C
発酵時間 90分パンチ60分
分割・成形 470g 丸め
ホイロ 30°C 240~300分
焼成 170°C 30分~
講習会の最後に代表2名が挨拶
大澤秀一氏
この大会に出場するために高崎に店を構えました。
コミの久保田はそれまで洗い物などをやっているパティシエの卵だったので
すが、こういう大会があるから一緒にやらないかと声をかけました。
彼女と営業している「コム・ン」は毎日がトレーニング場となっています。
今日のように場所が変わるとまだまだ課題があるので、あとひと月ほどで、久
保田と精度を上げていくので応援よろしくお願いします。
久保田遥さん
私はパンをはじめて1年半しか経っていません。大会に向けて毎日夢中で頑張っています。時にはメンタル面で不安なこともあり、大澤さんをはじめチームコム・ンの皆さんに支えられてます。皆さんにお世話になりぱっなしになっていることは自分が一番よく理解しているつもりです。結果を出すことが一番の恩返しだと思っていますので本番では私らしく明るくやるので応援よろしくお願いします。
大澤さんたちは10月22日(現地時間)本選に挑みます。
皆さんも現地、日本から大澤さん、久保田さんを応援ください。