北海道小麦便り
オンリーワンのパン作り
こんな話を聞いたことがあります。
フランスでは小麦は毎年性格がちがうので、職人はその年、その年、採れた麦と向かい合ってパン作りをしている。
一方国内では食パンの需要が伸びており、プライスカードには「国産小麦使用」の文字が目に付きます。今回は国産小麦の八割を担う北海道小麦を使った食パンを銘柄別に作って頂きました。
実験的な要素も含め、食パンを焼いてもらいましたが、もしかしたら食パンではないパンを作った方が、美味しいパンが作れそうな小麦も食パンを焼いてもらいました。
製作、協力頂いたのは「つくるを 食べるの もっと近くに」をコンセプトの北海道の山本忠信商店さんでお送りします。
株式会社 山本忠信商店
https://www.yamachu-tokachi.co.jp/
問い合わせ先
東京営業所
〒101-0051
東京都千代田区神田神保町1丁目60
赤石第一ビル 1階
電話:03-3295-2122
FAX:03-3295-2123
今回の食パンは同じ条件でそれぞれ焼いて頂きました。↓
食パン
配合
– 北海道産小麦粉 100%
– 水 60%
– 牛乳 20%
– 生クリーム 5%
– イースト 2%
– はちみつ 2%
– 甜菜含蜜糖 4%
– 塩 2%
– 北海道産バター 4%
工程
ミキシング
L2オートリーズ20分M3↓L2M3H1.5
捏上温度 24℃
一時発酵 20分パンチ20分パンチ50分
分割 230g×4
ベンチタイム 30分
ホイロ 28℃ 75分
焼成220°C 35分
春よ恋
(春まき)
灰分0.52%
蛋白12.3%
品種登録の際に募集をかけて選ばれた、言葉とおり、春が早く来て欲しいという願いが込められ名付けられた、「春よ恋」。4~5月の春に種をまき、9月、秋頃には収穫、4か月の栽培期間の麦です。
春まき小麦は、畑作地帯の輪作体系の維持や転作畑向けとしても重要な作物と言われており、国産麦としては蛋白含量が高く、強力粉的性質をもつため、国産麦を利用したパン用粉原料および醸造用(醤油)原料として使用されます。
それまでの春まきの麦は収量が低く、穂発芽や赤かび病耐性が不十分であることから作付け面積は減少し続け、供給は需要の半分程度しか満たしていませんでした。そのため、多収で、穂発芽および病害抵抗性に優れ、品質の優れる品種の育成が望まれ誕生しました。
原粒灰分はやや少なく、蛋白量はそれまでの春まき小麦の「ハルユタカ」とほぼ同程度。製粉歩留およびミリングスコアは低く、製粉性はやや劣る。60%粉灰分はやや高く、蛋白量はほぼ同程度で、アミログラムの最高粘度は高いという特性を持ち合わせています。
→春よ恋は、キタノカオリに生地の出来方が、似てる気がしますが、出来上がった生地が繊細な感じがします。
みのりのちから
(秋まき)
灰分0.43%
蛋白12.4%
「みのりのちから」は秋まきの超強力小麦です。耐倒伏性はやや劣りますが、多収で栽培に当たっては、倒伏させないよう、窒素肥料の施与法に注意が必要です。
パン又は中華麺の製造用として「みのりのちから」を産地品種銘柄に申請し、3月31日付けで農林水産省より認定されました。
生産者と実需者の未来の為に品種化に向けて取り組んできた小麦です。生産者にとっては多収品種として、実需者にとっては使いやすい品種として、多方面からのニーズに応えることのできる期待の品種です。
→みのりのちからは、ゆめちからと似てニ段階で生地が出来る感じがします。
給水はゆめちから より3~5%ぐらい少ない方が良いと思います。
ゆめちから
(秋まき)
灰分0.51%
蛋白13.5%
新しく登場する国産パン用超強力小麦に夢を託すと言う意味を込めて命名されました。グルテンの力が極めて強い超強力秋まき小麦品種です。
同じ品目を作り続けることで発生する連作障害と土壌病害があります。特に顕著だったのが土壌病害により発生しやすい『コムギ縞萎縮病(しまいしゅくびょう)』です。
「コムギ縞萎縮病」
コ ム ギ 縞 萎 縮 病 は 、 土 壌 中 に 棲 息 す る P o l y m y x a g r a m i n i s ( ポ リ ミ キサ という微生物が媒介するウイルス病です。 融雪後の小麦に葉の黄化症状や、かすり状のモザイク症状、アントシアンの蓄積により 紫色を帯びる帯紫化症状や株全体の萎縮症状などを引き起こします。
原粒の蛋白質含量が高く、土壊病害であるコムギ縞萎縮病に対して極めて優れた抵抗性を有する「ゆめちから」は北海道の本病発生地帯の秋まき小麦の安定生産に長けた麦と言われています。
→ゆめちからは、給水も高く伸展性の高いしっかりした生地が出来ます。ミキシング中に二段階で生地が出来上がる感じかします。ミキシング後半に更に生地が締まる感じです。
きたほなみ
(秋まき)
灰分0.43%
蛋白9.8%
「きたほなみ」は,1995年に北海道立北見農業試験場作物研究部小麦科(農林水産省小麦育種指定試験地)において耐病性,穂発芽耐性に優れたやや早生,良質,多収品種の育成を目的に「北見72号」(後の「きたもえ」)を母,「北系1660」を父として人工交配を行った雑種後代から育成されました。
2006年12月に「小麦農林168号」として農林登録され「きたほなみ」と命名されました。
「穂発芽耐性」
外観は発芽しているように見えない種子でも、内部で発芽の過程が始まっている場合もあり、降雨により穂発芽が発生し、収穫前に種子の発芽が始まると、発芽のための栄養として種子に蓄えられているデンプンなどの貯蔵物質が消化・分解されてしまいます。小麦粉の主要成分は、種子に含まれるデンプン等であるため、貯蔵物質が消化・分解されてしまうと小麦粉の品質が悪くなり、おいしいうどんやパンが作れなくなります。
→「きたほなみ」は、給水が「ゆめちから 」と比べ15%ぐらい低く、生地のまとまり、生地の出来上がりも他の品種より遅い気がします。
「春まきと秋まき」
秋まき小麦は一定期間低温条件で生育しないと穂を作らず、茎葉だけで生育が終わり、花や実をつけずに枯れてしまいます。北海道の秋まき小麦品種は比較的長い期間の低温が必要ですが、本州以南の小麦品種は必要な低温の日数が少なくなります。必要な低温の期間が終わり、温度が上がって日照時間が長くなると、穂を作ります。春まき小麦は低温にあたらなくても、温度や日照時間が確保されると、穂や実をつけることができます。北海道
では秋まき小麦は9月に播種し7月下旬に収穫、春まき小麦は4月に播種し、8月に収穫します。春まき小麦は生育する期間が短くなるので、収量が秋まき小麦より少ないですが、蛋白含有率が高くなりやすいことからパン用として主に利用されます。また、春まき小麦を根雪直前に播種して雪の下で芽を出させることで生育期間を長くし、収量を高める「初冬まき栽培」が一部で行われています。
キタノカオリ
(秋まき小麦)
灰分0.53%
蛋白12.3%
「キタノカオリ」は赤さび病抵抗性、うどんこ病抵抗性および耐倒伏性は優れています。粉質は硝子質であり、小麦粉は黄色みが強く、製パン適性は優れています。
耐倒伏性
作物の倒伏に対する抵抗性のことを示し、倒伏が多発すると収量の減少や品質劣化を招き、さらに機械による収穫作業が困難になるため、作物栽培において耐倒伏性は重要な特性があります。
パン用品種なので、子実の蛋白含量が高くなるように肥培管理に努め、起生期の窒素施与は収量性の向上に、出穂期以降の追肥は子実の高タンパク化につながります。
キタノカオリの成熟期はホクシンよりも遅いので、過剰な後期窒素施与による更なる成熟期の遅れに注意する必要があります。
小麦縞萎縮病には弱いので、すでにホクシンで発生が認められている圃場では栽培しない。多雪地帯での冬損程度はホクシンよりやや多い傾向にあるので、適切な管理に努める。赤かび病には必ずしも強くないので、防除の徹底を図る。穂発芽性は必ずしも十分でないので、適期収穫を励行する必要があります。
→「キタノカオリ」は、生地のまとまりもよく給水も高いく伸展性の高いしっかりした生地が出来上がる感じがします。
参考
→「ホクシン」
北海道では主にめん用に使われる秋まき小麦とパン用の春まき小麦が栽培されている。そのうちの9割近くを占めるめん用の「ホクシン」は生産過剰気味であるが、一方パン用として需要の高い「ハルユタカ」は度重なる穂発芽被害等で供給量が減退するなど、民間流通に移行してもなお需給のミスマッチが続いていました。そこで、パン用に利用できる秋まき小麦品種の育成を行い誕生したのが「ホクシン」です。