一般財団法人 藤井幸男記念・教育振興会 製パン講習会(前編)
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一般財団法人藤井幸男記念・教育振興会製パン講習会
2018年10月16日(火)丘の町美瑛町bi.blé(ビブレhttps://bi-ble.jp/)
「種の競演」
ドイツサワー種
明石克彦氏(ベッカライブロートハイム)
イタリアパネットーネ種
秋元英樹氏(コシュカ)
講習会タイトルが「種の競演」でしたが |
特別ゲスト播州赤穂より
西川明男氏(Pizzeria Ristoranee SAKURAGUMI)
進行 仁瓶利夫氏(ラトリエ ドウブテイユ)
アシスタント
奥田有香(東京都小金井市L`atelier de KANDEL Tokyoオーナーシェフhttp://www.kandel.jp/)
毎川亮(福井県福井市L`ESSENTIEL オーナーシェフhttps://www.facebook.com/LESSENTIEL-1604487136492054/)
当サイトが届けたい製パン技術や知識が詰まった講習会が北海道美瑛町「bi.blé」にて開催されました。主催は一般財団法人藤井幸男記念・教育振興会(http://fujii-yukio.or.jp/)による技術講習会となりました。
今回はボリュームのある内容でしたので2回に分けて本講習会をレポートします(前編)
バーデルボルナーラントブロート
【デトモル2段階法】
ドイツ北西部ノルトライン地方、ウエストファーレン地方などで作られているパン。今回はデトモルト2段階法を用いていく。
最初に硬い元種を作っていく。通常サワー種はライ麦粉に8割の水を混ぜていくが、この種は5割の水で仕込む。ミキサーで回すのは難しい為、手で捏ねることもある。
1段階法で作ることが多いライ麦パン、受講生も含め2、3段階で種をおこしている人は少ないと思われるという話があった。
デトモルト3段階法は冷蔵庫のない温度調整が難しかった時代にベストな製法として用いられ当時味わい深いパンが焼かれていた。
3段階法は作業工程が多いこともあって2段階法が考案され、3段階法の長所と1段階の簡易性を持ち合わせたのが2段階法といわれている。
他にも短時間の種おこし法があるが一般的にはデトモルト1段階法を用いている場合が多い。
このような製法があることを知ってもらいたいと紹介されたライ麦パン。
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受講生より「サワー種でこういう硬い生地があるのですね」という話もあった。
種は23℃で捏ね上げて27℃まで種の温度を上げていくので27℃/70%で
保管しゆっくりと種の温度を上げていくようにしている。
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捏ね上げてから3時間掛けて29℃に種の温度は落としていく。元種24%、ライ麦粉24%、水24%、軟らかい生地と33℃の高めの捏上温度によって乳酸が発生してくるのがこの製品のポイントとなってくる。酸味もありコクのあるパンとされた。
ミキシングはライ麦パンのセオリー通りのミキシングを行っていく。
木枠は焼成時間が60分と長い時間入るので水に漬けてケアを行い枠の周りにラードを塗っていく(成形の時も手にラードを塗って作業する)ヒノキで作った自家製の木枠はパンに香り与付してくれる。
ロッゲンミッシュブロート、ベルリーナラントブロートとライ麦の比率は同様であるが前記した2品とは異なる味わいとなる。
食べ方としてはマスカルポーネをのせて酸味のあるジャム(この日はルバーブ)を塗って食べると美味しい。
ライ麦パンは食事の器のような存在なのでそのままでは受け入れられ難いのでこういった食べ方の提案が必要。
ロッゲンシュロットブロート
ライ麦比率90%(ライ麦粒と全粒ライ麦粉、ライ麦粉)と乳酸発酵の味わい
通常、前処理に塩は入れないがシュロートの粒に付着している野生酵母の雑菌の繁殖を防ぐために塩を配合する。
ライ麦パンは通常、原材料が混ざったらミキシングを終了させるのがセオリーだが、このパンのような穀物の前処理が配合されたパンは2速で1~2分混ぜ練り気味に捏ね上げていく。
この効果としてスライス時に刃にパンがこびり付くようなことはない。他にボリュームも出て味も良くなる。
だからと言って長めに回わせば味が良くなるわけではなく、出来が良いので味が良くなるという考え方を忘れてはならない。
2速で回していると粒が潰れライ麦独特の粘性が出て生地がつながり、音が変わってくる。糸をひくような生地に捏ねる(ミキサーボウルの景色が変わってくる)。このあたりが見極め。
分割後生地はまだ水分を吸っていない。ここで5~10分置くことでしまってくる。ここで生地はやっと残りの水を吸い始める。ここでしっかりと時間を置くことが重要。
ライ麦パンは捏ね上げてから発酵をほぼ取らずを成形するのでホイロでの60分発酵が味の形成を行うところ。
60分発酵させる配合や工程を組むことがライ麦パンにとっては不可欠である。
ゾンネンブルーメンブロート
【サワー種】
レストブロート、シュバルツ、水、初種
65℃の仕込み水で初種以外を混ぜる。
30℃になったら初種を加え27℃で15時間以上保管
【レストブロートマッセ】
パン粉と水を合わせて冷蔵保管
【アロマシュトゥック】
ブロッケン、水、モルトを生地温が65℃になるまで炊き上げる(約180分)
【クヴェルシュトゥック】
ひまわりの種と水を合わせて冷蔵保管12時間以上
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このパンは原田良平氏(株式会社丸菱商事)がドイツミュンヘン近くの「ベッカライブロートツァイト」で学んできたパンと紹介された。
非常に軟らかい生地として捏ね上げられ、分割後、型に入れて成形が終了するパン。こういった工程のパンがあっても良いのではとの話もあった。
配合内のレストブロートマッセに関して次のような話があった。「美味しくなる」「老化を遅らせることができる」「残ったパンを使うのでパンを無駄にしない」と大きなメリットが詰まっている。
アロマシュトックはこれまで日本には伝えられていなかった処理方法。
ドイツには、まだ我々の知らないライ麦の使い方、処理方法などが沢山あると思われる。
日本人の米、米飯、ご飯を様々な形で応用利用しているように、ライ麦パンや雑穀が日常的な
食べ物となるドイツ、東欧、北欧などには興味深い利用方法があるという、今回はその中の一つを
紹介した。これでまたライ麦パンが面白くなってきた!!
(日本パン技術研究所が発刊している「Pain 9月号」根岸靖乃氏のレポートが掲載されている「ドイツパンにおける粉・雑穀の前処理方法」 参考文献)
クロワッサン ショコラ コーヒーで朝食
この日会場となった、同店代表中道博氏(レストラン・モリエール)より、以前講師を務めた明石氏との会話の中で明石氏の息子さんが朝、良い状態のパ ン・オ・ショコラを食べてから登校するという話に感動されたそうだ。
パン屋さんのなにげない日常の風景に感動されたようだ。中道氏から受講生にもそういった思いをなんらかの形で感じてもらいたいと朝食として同店よりクロワッサンとパン・オ・ショコラが振舞われた。(コーヒーとともに)