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製パン基本のき 4  レシピ ベッカライ ブロートハイム 明石克彦

製パン基本のき 4

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レシピ

ベッカライ ブロートハイム

明石克彦

そうですか、講師としての立場では如何ですか?「そのままやってみてください」それと も「ちゃんとお宅の店に合ったようにやってください」どちらですか?

明石  まずやください。失敗してって。まずやって、失敗したらわかるよということは 話しますって見て。

確かに何度か明石さんの講習会を取材させてもらっていますが、 明石さんと同じものを作るのは難しいだろうなとは思ってみています

明石  それと、これはあんまり言ったことはないのだけれど。例えばうちから卒業するじゃない ですか?そうすると近いものは出来ます。材料も道具も設備も同じものを揃えられますか ら。そうすると僕はさらにうちのバージョンを変えます。だから、卒業生がシュトレンの レシピを見て十何年ぶりに見て「ずいぶん変わっているのですね」と。いやいや、変わん なきゃおかしいだろ。これだけ原材料の性格が変わっているだから、それは変わるよと話します。逆に変わってないのがおかしいんじゃない?と。独立したスタッフはだいたい同 じものを揃えますから材料や機材を。うちに居たわけだから近いものは作れると思います。 例えば 1 年前に辞めた元スタッフがふっとうちに入ると、みんな結構驚いている。たまに ね、ちょっと軌道修正で入れてくれっていうことがあるのですよ。「え?これ前とずいぶん 違いますね」「もうそりゃ変わるよ」と。意識的に変えている。どうせもう…要するに結局 同じパンは僕要らないと思っているから。

マイナーチェンジですかね

明石 そうそう

原価的にも上がっている原材料があったり、どうしても使いたい物も出てきますものね

明石 そうそうそう。だから、より良くしているつもりです。

そう言われると、レシピってただのメモだよっていう意味がわかります。もうちょっとき ちんと生地と向き合えってことですよね

明石 そう、そっちの方が大事ですから。だからレシピは変わらなくても、パンはガラッと変わ るのですよ。要する丸めの強さだとかそういうのを変えられたら、こんなに良くなったよ っていう。今は僕ずっと現場入っているけど、入らない時期もあるけれど、そういう時は、 年に 1 回か 2 回、1 週間単位で朝から晩まで入っておかしいところ全部直すのですよ。そう するとレシピは変わらないのですがパンがそこから変わる。売り上げも変わる。だから前 もよく言ったのだけど、ある日、品物はちゃんと出ているそれなりに。だけど、1 個 1 個ア ンパンもクリームパンも輝いてない時がある。そういう時に入るのですよ。そこで入ると、 その後見ると輝いている。そうするとやっぱり売れる量が違ってくる。だからそれを毎年 いつも 2 月頃にやっていたかな。今はずっと入っているから、しょっちゅう見て触ってい るからね、調整しているけど。それでも「あ、やばいな」っていうのも結構あるけど。

スタッフが多いとブレもありますよね。メモという言葉には驚きましたけど、そういう意 味なのですね

明石 みんなそう、あるとみんなこればっかり大事にしちゃうから。こっち見ないからダメ。講 習会でもさ。だからそれはもうね、こっち見る人っていうのはやっぱりね、パン作りうま い。 ※「こっち」=作業

講習会もレシピ配らないでやるのもアリかもしれませんね

明石 そう。いや、いらないかもしれない。でもメモ取らせると今度はこっち見なくなるから、 だから一応…

そうですね、メモばかりで作業を見なくなりますね

明石 講習会の講師を頼まれる時に、「修正どうですか?修正どうですか?」と聞かれるのだけれ ど、いやいやこんなの毎日変わるのだから。要するにちゃんとしたレシピを、間違いのな い 0.1 パーセントも間違いないレシピにしたいらしいのだけれど。いや、そういうのは季節 変われば水もなにも全部変わるのだから。それよりもっと大事なとこあるでしょう?って。 レシピの数字だけじゃなくて…っていう話ですよ。いつも…当日直すからと言って、数字 は修正していますね

主催する方は早く自分の仕事を終わらせたいのかもしれませんが・・・・ でもレシピで商売ができる世の中じゃないですか。今はレシピを集めて、人に教えて 商売する人も居ますから。レシピが違った意味で重宝されているように感じます

明石 前に鹿児島のダンケンと言うパン屋さんがあるですが、そこのパンはクオリティが良くて、 ロデヴの会の会場で使わせてもらったのだけれど、事務所で着替えた時に壁に貼ってあっ た。「レシピは毎日変わる」。あぁ、偉いなと思って。

鹿児島のパン屋さんで。。

明石 だから、これ紙が大事なんじゃなくて日々に合わせて数字が当然変わったりするので、粉 のロットによっても変わるし。だからレシピは固定なのだと思っている方がおかしい。そ れをちゃんと黒板だか色紙かなんかに書いてあるのですよ。その横には、今月売り上げの 予算はもうクリアしましたって。だからその店舗は 1 ヵ月 2000 万の予算が…すごい。やっぱりこういう店ってそうなのだろうなって。厨房も綺麗でした。

まだまそういう店があるのですね

明石 そのお店を訪れた時期はシュトレンがあったのだけれど食べたらおいしいので「あれ?こ れどういうシュトレン?」ってレシピ見せてもらったらバターじゃなくてマーガリンだっ た。オーナーが「うちそんな、バターみたいなの使って…そんな技術ないですからこれで やっている」と、おいしくてびっくりした。だから「レシピは日々変わる」、みんなレシピ は固定だと思っているから。だからまぁ、そういう意味じゃあれは良い言葉を書いてあっ たなと思い出しました。

日々変わるものだと

明石 うん、だって今週は月火休みで。ロデヴのルヴァン種を作ると言う話になって、スタッフ に俺やっとくからいいよって言って。ルヴァン種を種継ぎして、7 時間後にもう 1 回仕上げ 種作って。面白かったですよ、やっていて面白かったです。うちの種は菅原が担当してい るのだけれど、菅原がノートにかえり種の毎日の全部データを付けているのですよ。もう その日の粉温、室温、水温、種の温度。何分室温に置くとか、ルヴァン種専用にノート 1 冊あるわけ。で、それを見て。「うーん、なるほどね」って。俺にも低速 5 分回してほしい って。仕上げ種はでかいミキサーボウルで 5 分回してほしいと書いてあって。それはそう だよなと思っていたけど、実際はでかいミキサーの時も僕は低速 3 分の 2 速 2 分、トータ ル 5 分しか回してないのですよ。でもいい種できたし。ということは、このレシピのこの 配合とこの右側にある工程、これも同じように単なるメモで、これは目安ですよというこ とでしかないと思っています。あと大事なのはもうこっち(※)になる。

それはそうですよね。

明石 フランス人の職人を見ていると、彼らは水が何パーセントって決まってないわけでしょ う?だって水入れて、固さは粉で調整していくわけでしょう?で、粉計ってないから、それで、毎回塩味はこれだから(※これ=手で掬う動作)、だけどそれなりの味のバゲットを 作っているっていうのは、塩 1.8 とかさ、1.9 はあるけど。あとは全部これだし…。これだ し、だからすごいのだろって。

職人ですね

明石  そうですね。それをちゃんとした自分の技術として身に付けるためにはデータは必要だよ っていう話ですよ。

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