パン屋さん

パンを楽しむ料理 8  鈴木優子 フランスパン屋研修 2

パンを楽しむ料理 8 鈴木優子

フランスパン屋研修 2

前回から鈴木さんのフランスのパン屋研修をお送りしていますが(現在は同店は他のオーナーにより営業中です)お給料の話、仕事への取り組み方が日本と違っていて興味深く感じますが、お国が変わるとこうも違うのか!!と思ってしまいますが、鈴木さんを含め 登場する皆さんがパンを愛していることはお分かり頂けるかと思います。

200612

 12月に入り、パン屋のオーナーは冬の間のスタッフのシフト表を作成した。シーズン以外の時はパン部門2人・ビエノワズリー部門1人の社員で製造をして、シーズンに入ると数ヶ月間だけ季節労働者を雇うのがこの店のやり方。

この冬に来た季節労働者は6人。みんな他のパン屋で働いた事のある経験者ばかりである。シフトを見るとパン部門は000開始の人、500開始の人、2200開始の人に分かれて24時間体制でハード系のパンを焼き続けることになる。私の欄をチェックすると、2月末まで今のビエノワズリー部門での仕事になっていた。

オーナーには以前から、パン・ビエノワズリー・売り子の全ての部門をやらせてもらえる様お願いしたので「パンと売り子はいつやらせてもらえるのですか?1月と2月にパン部門と売り子部門をそれぞれ1ヶ月づつやるのは可能ですか?」と尋ねた。「シーズンが始まると忙しくなりすぎて色々と教えてあげる余裕が無いから難しい」と言われ、「事情も分かるが私はフランスの食文化を肌で感じる為に日本から来て、このお店の全ての仕事を知りたいのでどうにかしてくれ」ということをアピールしてみた。

翌日オーナーからの回答はこうだった。「クリスマス前までの2週間だけだけどパン部門に行って色々学んで欲しい。12月後半からは君にはビエノワズリー部門にいて欲しい。君の働きが必要なので、バイトとして君を雇いたいと思う。2月末までやってくれるなら給料を少しだけれど出すつもりである。売り子は2月末の状況をみながらやらせてあげようと思うけれど、どうだろう?」と。

私に向かって話すからと言って決して会話の速度を落とさないオーナーの言う事を必死で聞いて、理解した。

心の中でもしかして、良い感じ?作戦成功?!とつぶやく。そう。私は研修生(タダ働き)ではなく、バイトのスタッフとして働けることになった♪「給料は払わない」と断言していたオーナーの歩み寄りに感謝し、一員として認めてもらえたことに大きな喜びを感じ、素直に嬉しい。「分かりました。それで良いですよ」と冷静に答えたものの、オーナーと別れた後、思わずガッツポーズ!!そしてアパートまでの道をスキップしたい気分で顔はニヤケっぱなし。オーナーも私の魅力にやっと気付いたらしく(?!)、存在価値を分かってもらえたことがとても嬉しい。一員として雇いたいと言われ、1ヶ月コツコツと労働で自己アピールを続けて良かったし、自分の気持ちを主張して良かったと思った。雇われたからには、責任感を持ち、給料を払うに値する働きをしていると確信させようと決めた。そして、また力が沸いてきた。

*パン部門2週間研修

パン部門での仕事はいつもよりさらに早く作業を開始するので0:30に出勤。8時間時差のある日本のビジネスマンの皆さんよりも少し早めに仕事を開始していることになる。

お店に着くと、私より早くから作業している人がこねた生地が待っている。

総重量100kg以上ある生地を計量し、容器に移すのが私の仕事。

それからバゲットやハード系のパンの分割・成形が永遠と続く。

周囲の人の作業はとても早く、圧倒される。ひたすらバゲットを成形し、寒い冬に汗をかいてしまうほどだ。力仕事ばかりである。小麦粉の袋は日本では25kgが主流だが、この店が使っているのは50kgの袋。ミキサーに粉を量り入れるのがかなり大変。2日目にして筋肉痛&腰痛に悩まされたが4日目からは慣れてしまった。

夏に軽井沢のパン屋でバイトしていた時を思い出すが、恐ろしい事にもうあれは10年前。体力が落ちていて当然だし、気付けばパン部門で働いているスタッフ全員私より若い男性だ。

力仕事はかなう訳はないけれど成形などはより早く、より綺麗に出来る様にかなり努力をした。日本のやり方と違うし、生地の感じも違うし最初は時間がかかったがコツが分かったらとてもやりやすく、ドンドン早くなっていくのを実感。

社員と比べるとまだまだ遅い私でもバゲットだけで1日200本以上は成形していることになる。仕込んでいる生地は12種類ほどで、そこから大きさや形が違ったりクルミやレーズンを練りこんだりで、結構な種類になる。

5:00くらいまでひたすら生地を捏ねるのと成形の繰り返し。横では最終発酵が終わった物をつぎつぎと石釜で焼いているスタッフがいる。一度に150本のバゲットが焼ける石釜で薪の量で温度を調整し、釜入れと釜出しを順序良くやっている姿は格好良い。

私も窯出しは、たまに行った。やはり主食だけあってバゲットやカンパーニュなどのハード系を焼く量が多い。

ビエノワズリー部門とは全く違う仕事内容だったのでまた刺激になりとても楽しかったし、勉強になったし、パン部門のスタッフとも仲良くなれた。

2週間でも体験するチャンスを与えてもらって(奪い取って?)良かった。正直、1ヶ月やっていたら身体が持たなかったかも?!

日本の製法と比べると違う部分もあり、自分の今までの常識が変わり、またパンの魅力に触れた感じがする。家に帰るとパン作りについて思う事をメモし、真剣に考える時間も増えた。

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