パン屋 噺 3
コム・ン 大澤秀一
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久保田さんの存在も大きかったのですね。本選のアイテムで苦労されたのはどんな製品ですか
大澤
ヴィエノワズリーですかね、他の製品もどれもそうだったかな。。。
作品というのは、何度も繰り返して出来上がった製品なので自分たちの中ではベストなわけですよ。イケると思って監督の安倍さんに確認してもらうと「アカン」と一言返ってきて笑。自分の子どものように大事に作り上げたのに、どうして??という思いの方が強くて。今考えると客観性に欠けていたなと感じますけど。
アカンですか。。。気持ちもこもっていた作品なのにと言う感じですかね
大澤
トレーニングが終わってうちに帰って寝るまで作品のことが頭の中にあって、それがずっとだったの終わりが無い日々でしたね。
寝ている時以外はずっとオンなのですね
大澤
辞めたいと何度思ったか分かりませんよ。
少し話が戻りますが、久保田さんはコミとしてどのような役割をされていたのですか
大澤
キャリアも浅いので、配合や製法を考えろというのは難しかったので、器用でしたからそういう作業を任せていました。ステンシル使ったデザインなどは助かりました。
辞めてもらって構わないくらいの接し方で付いてきてくれたのは今の若い子ではなかなか居ないと思います。壮行の応援講習会で監督の安倍さんが大澤さんを今までで一番優勝が出来る可能性を持っているとおしゃっていましたけど
大澤
安倍さんからそういう言葉を頂けて頑張れたというのはあります。もちろん他の皆さんにも同様の言葉を頂きましたし、自分自身もそういうつもりで臨みました。本選の時に日本からもたくさんの応援団が駆けつけてくれましたからプレッシャーはハンパなかったですね。
優勝出来た要因はどのように考えていますか
大澤
自分はパン屋の息子で小さな時からパンに囲まれて生活してきたわけですが、コンクールに出るなんて考えたこと有りませんでしたから、谷口さんが出場された際にそばで見てかっこいいなと思ってチャレンジしたわけですけど。コンクールで作るパンと普段食べてもらうパンは価値観が違いますから。
これまた書けないような発言を。。。
大澤
パンは日常の中で食べてもらって美味しいと言ってもらえるのがパンだと思っています。
評価をされるのは同じですけどね、確かに違いますものね
大澤
日本代表を決める予選の時は大澤秀一として出ていたので、自分の思うパンを作りましたけど。代表になってからは、予選で競った皆さんやアンバサドール委員会の皆さん、様々な方達の想いを背負っていたつもりです。そういった気持ちのこもったパンと言いましょうか。
日本代表として自覚がこもったパン?
大澤
今回出場した中で自分はズバ抜けているとか、実力があったわけではありません。しいて言わしてもらえば自分たちは参加者の中で一番練習をしていたのが自分たちだったんじゃないかと思っています。収入とか関係なく久保田と人生掛けて臨んだので練習以上の実力が出せたのだと。それが優勝という結果に繋がったんじゃないかと感じています。
練習の時以上のポテンシャルが出たのですね
大澤
今回で日本も7回目の出場でしたし、対策も十分だったと思っています。そういった意味で関係者のバックアップも大きかったです。練習場所を貸してくれた機械メーカーの皆さん、多くの方達のバックアップがあってこその優勝だと思っています。
「アカン」ですね笑 次の目標は9月の「ベスト オブ モンディアル」ですか
大澤
レギュレーションがまだ出てきていませんけど、当面の目標はそうなります。もう一度優勝出来るよう頑張ります。
現在、ご自身のお店も休業されていますから、やらなくてはならないことがたくさんありますね
大澤
4月からアンバサドール協会で全国を回って講習会を行います。ベストや自分の店のこともありますが、そこで若い人たちと交流を持てたらなと思っています。将来的な話になりますけど、パン職人の地位が上がるよう若い人たちと何か出来ないかなと考えています。