パンの資料

製パン基本の「き」 6 ベッカライ ブロートハイム 明石克彦

製パン基本の「き」
ベッカライ ブロートハイム 明石克彦

通常このコンテンツは、製パン業務の基礎となる話を明石さんに聞いていま すが、今回に限り新型コロナウィルス感染症の影響と今後変わっていくと思 われるベーカリーの在り方をお聞きしました。

はじめにコロナの影響を感じたのは、いつ頃からでしょうか

明石

2月半ばちょっと前あたりから生産量が増えてきて、店の動きに変化が出始 めました。3月に入ると平日なのに土日のような生産量が続いてこれは普通 じゃないなと感じました。

早い段階で忙しくなったのですね

明石

今思い返すと、その頃から自宅待機する人が増えたんでしょう。スーパーで もパンが不足しているということだったので、当時はその兼ね合いもあって、 うちも増えているのかと捉えていましたが….

マスクのようにパンも店頭から無くなると勘違いされたかもしれませんね

明石

いつになっても客足が落ちなかったので、製粉会社に問い合わせると、大手は増産しスーパーも安定供給になってきているということでした。

それでも客足が落ちなかったというわけですね

明石
そうなんです。食べ歩きをするような層が空いた時間を使って来店するようになったんじゃないかと思っていました。

近隣の方ではなく、わざわざ来る方ということですかね

明石
店を覗くと普段見ないお客さんが増えてきていましたから。

お店をはじめて 33 年目にもなるとお客さんをよく把握されていますね

明石

その頃からオススメパンは何ですか?と聞かれることが増えてきました。甘 いパンか、塩味のパンなのか、食事パンなのか、どんなパンをお買い求めな のかと聞いて対応するようにはしていました。

オススメですか

明石

結局、ご自身の好みで買っていかれますけど。販売スタッフにはこの期間、 大変な想いをさせてしまったなと思っています。

販売スタッフは最前線でお店を守っていますものね

明石

店を閉める時にパンが残らず売り切れていて、店には常に人が溢れていまし たから、息つく暇もないような毎日でした。

こういう時期に店頭に立つのはご苦労ですよね。スタッフさんを含め、売場 のコロナ対策はどのような対応だったのですか?

明石

安全対策として入店の際のアルコール消毒、人数制限、マスク、ドア開閉、 空気清浄機設置などを施して接客を敢行しました。安全対策は、不特定多数 と接する販売員としても安心できる範囲内であったと思います。

現在は緊急事態宣言が解除されましたけどまだまだ予断は許さない状況ですし

明石
バゲットやハードトーストなど個数制限を掛けたにも関わらず、 毎日売り 切れが続きました。そんな中、ライブレットも残らずに売れていたので、こ れを機にライブレットの美味しさを分かってもらえる絶好の機会だと思っ たのですが….

ライブレッドをこれだけ揃えているお店も無いですものね

明石
残念ですけど、6 月に入るとライブレットは通常生産数に戻ってしまいまし た。

今はどこのパン屋さんも食パンが好調のようですから、そういう層はライブ レッドより柔らかい食パンや具の入ったパンを好むのかもしれませんね

明石

うちは食事パンがメインですけど、この期間、食事パンメインのパン屋だけ ど、甘いパンを作っても美味しいというのを分かってもらえたと思っていま す。それでも生産が追いつかなかったですが。

17時に閉店で閉める時には、パンが無かったということは、かなりの数を作 っていたのですね

明石

先ほど話ましたが、うちは元々食事パンがメインの店ですから、そこを見直 す良いきっかけになりました。短い営業時間内に、パンがどんどん売れていく様子を見て元々のコンセプトを再認識しました。

食事パン主体のパン屋さんも少なくなってきましたし

明石

我々パン屋は、パンを買いに来てくれるお客さんにパンを提供するのが仕事 です。お客さんの希望に沿うよう体制でお客さんを迎える店で無くてはなら ないと思っています。今回、生産体制が追い付かず、販売個数など制限を掛 けてしまいましたけど、お客さんがそれを受け入れてくれたのは収穫でした。 パンの予約もこちらが提示する内容にクレームもありませんでしたし。

これからはパン屋さんに限らず、色々なことが求められ始めると思います。このタイミングで自店の体制を整えるのは重要なことかと思います

明石

昨対に近い売り上げ数字を確保できたことは何よりです。特に食事パンを求 める方々にできる限りパンを提供することで近隣の方々の食生活の一旦を 安定させることができたと思っています。

ベーカリーは地域の方たちの生活と密接な関係がありますものね

明石

今回のコロナは、東日本大震災の時の食品不足と次元が違いますが、震災と して捉えて対処しました。災害、震災時に食品原料を備蓄しているパン屋の すべき義務と捉えておりますし、地道なパン屋の営業にスポットライトが照 らされたような気もしました。開店して33年になりますけど改めてパン屋で 良かったと感じています。

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